EMMA (以下 E) : まず二人に訊きたいのは、最初に企画を聞いた時どんな感じでした?
OGAWA (以下 O) : 俺は、ACIDって自分がDJ始めた時から身近にあるというか、わりと TRAXだったりとかDJ Internationalだったり、その辺の初期の曲ってやっぱりACID使ってるのが多いし、なじみはあるんだけど、楽曲制作って形になると、あえて手を出していないというか。 楽曲制作的には身近じゃないもの、DJ的には身近だけど。 だから、どう料理すればいいんだろうな?って。
UNIC (以下 U) : 僕はけっこうACID小僧っていうか、TB-303大好きで、ひずんでるの大好き っていう風だったんですけど。 ただ、一緒に作る行程で、どうなんだろう?っていうのはあって。 なのであえてACIDっぽいものは避けてましたよね?
O : 今回一番最初に作ったときは、もろにACIDっていうのは避けて、自分達のカラーの中にACIDを取り込む、ぐらいの。
E : エッセンスとして?
O : ちょっとなめた態度でかかっちゃってるというか。 ACIDそのものを消化しようっていうんじゃなくて、自分達の中に寄ってくれ、みたいな。
U : そんな傾向でしたね。 最初にACIDから作ってないっていうのも もちろんあるし、 いつもどおりの空間的なサウンドというか、そういうところにうまく隙間があったら入る、みたいな感じで最初は作ってましたね。
E : ACIDをやってしまうと、すごく印象が付きやすいと思うんですよ。 どのダンスミュージックの中でも、一番ね。 ACID!っていう印象がついてしまう怖さ、失敗したら取り返しがつかないみたいな。他のものよりそういう危険性はあると思う。 だけど今回こういう形で参加してもらって。実際作ってみて、どんなでした?
U : ACIDってベースラインの機材ではあるけど、ベースではないじゃないですか。決して太くはないし、真ん中が尖ってるっていう感じのものだから。 作ってる段階で、やっぱ軸になるようには考えましたけど。
E : 難しかった?
U : 最初のバージョンの時は難しかったです。本音言うと、すごく。 他のものが形成している中でACIDを入れるのと、ACIDを軸で作っていくのだと、全然後者の方が作り易いですよね。
E : 楽曲制作の考え方そのものを変えるしかない、そういう難しさってこと?
U : ですね。
O : 焼肉に例えれば、どこ産の肉をいれよう、とか、松坂牛を使おうとか神戸牛を使おうとか、じゃあ神戸牛ならこうだからこういう味付けにしようとか、 いつもだったらそういうのができたんだけど、 ACIDって多分メインの肉になり得る物ではなくて、だけど焼肉を食べにいく時に必ずなければならないキムチのような。 意外と刺激もあるし、なくてはならない物なんだけど、そこをメインにしなきゃいけない、そういう難しさ。
E : 分かるようで分からない答えだったけど。笑
O : すごい分かるでしょ。めちゃくちゃ分かるでしょ。
E : これからのO&Uの向かう先、どういう音楽をやっていきたいか?っていうのを教えてほしいんですけど。
O : 基本的には、いつも作っててそうなんだけど、 プログレッシブハウスってイメージもなければテクノってイメージもなくて、 だからといって無法地帯の中で作るっていうわけでもなくて、 昔から在る核的な部分っていうのが何かしらエッセンスとして盛り込まれてて、受け取る人によってはテクノだったりとかプログレだったりとか。 一般層に向けてっていうのも もちろん大切なことなんだけど、そうじゃなくてまずDJが使い易い、DJユースな部分っていうのが前面に出て、テクノの人にもプログレの人にもテックハウスの人にも使ってもらえて、みたいな。 そういうのを、もう少し極めて作っていけたらいいかなって。
E : 現場で、DJ達にかけてもらうようなものを、意図して作っていくことだね?
O : うん。
E : なるほど。それが今回のACIDで、また考えるところがあったりするのかなあと思ったんだけど。意味のない面白さっていうのもあるじゃないですか。メロディーが入っちゃうと意味が出てしまったりとか、意味をつけるためにコードがあったりとかすると思うのね。 っていうのは、僕自身が今回はベースミュージックの重要性を感じてて。基礎として俺もやっぱACID HOUSEから入ってるの、四つ打ちの場合。 だから5年周期での小さい波、10年周期のゆるやかなACIDブーム、そして20年という大きいタームの中でのムーブメント。 この5、10、20っていうのがちょうど合わさった感じが、今だと思うのね。 これは古くからダンスミュージックに関わってる人達だったら感じてる事だと思うんだけど。日本っていう国はずっと後追いであって、時には海外で流行り終わったものが流行ってしまう、このタイムラグの矛盾点、はがゆさ。 二人は世界を視野にいれてると思うんだけど、どう思う、そういったものを変えていけると思う?
U : 二人で作ってて、使う側、作る側って切り離せないと思うんですよ、今となっては。タームっていうのあるんですけどスパイラルな感じでここできて、ここできてって感じになってくると思うんですよね。だからここのままでは作れない、DJピエールみたいなのを今作っても仕方がないし、Hardfloorみたいな一発芸でも良くないと思ってて。 昔の技術は、機材走った録ったで終わってるところがあると思うんですけど、 やっぱり意識してるのは今のデジタルウェアの技術を生かせられる、例えば、 油絵を描くんだけどそれをデジタル化して処理する、みたいな。
E : それは細かく計算して構築していくっていう考え方ですよね?
U : テストしながらやって、これダメだ、って。情を持たないようにはしてて。壺職人じゃないけど、またやり直す、っていう状況にはしてますね。
E : ハードウェアやソフトウェア、テクノロジーの進化と共に常にダンスミュージックは影響を受けて、一緒に育ってきてる。話はちょっと違うんだけど、ドラッグとかでも新しい物ができたら、新しい音楽ができてるよね。これ本当に歴史が証明してて。ていうことはさ、人間の意識で新しい物は作れるんじゃないかなって思っていて。俺はそれをやりたいんですよ。 考え方ひとつ、捉え方ひとつで変わってしまうという、制作する時の。 どこを狙うのか?っていうことではなくて、例えば、ダンスミュージックの入口として、初めてクラブに来る人に向けて曲を作るDJするっていう人も、 いていいと思うのね。 だけどそれでは、ずっと俺らが はがゆい思いをしてきた”後追い”になってしまう。海外の人達が作ったムーブメントが日本にやってくる頃には、海外では確実に廃れてるんだけど、日本にはマーケットができるよね、2年後ぐらいに東京なり名古屋なりにマーケットができる、このマーケットにめがけて日本のPOPSの人達がドーンってやる、だから壊れるんだよ。 好きな人はジャズでもロックンロールでもずっと好きで聴いてると思うのね。 それはそれですごいことだと思うんです。残ってるっていうのが。 今の日本の現状は、そのやり方が定着しちゃったが為に、残らないと思う。 エレクトロでもなんでも。 そっちの方が圧倒的に多いから、じゃあどうする?ってことになるんですよ。アンダーグラウンドで。 小川くんのDJを海外のDJが聴いて、あ!って思ったりとか、 この曲を聴いてエルナンがプレイしたりとか、そういうことって本当に一握りなんだよね、日本のシーンの中で言うと。 ないがしろにされがちなシーンであって、いつ失くなってしまってもおかしくない。 そこに力を持ちたいっていうのがあって、権力云々ではなくて。 固まりたいっていうのとは違うんだが、だからレーベルやってるんだけど。
O : ひとつのキーワードになるからね。
E : そうなのそうなの。 自分達が日本に居て、そういうのを感じつつ活動できたらさ、本当はそれがムーブメントになるんですよ。多分ね、結果的にね。 それを皆で目指していきたいと思ってて。 何かアイデアとか、こうすればもしかしたら日本は、っていう事とか、 日本中の曲を作ってる人やDJに対してのアドバイスとかメッセージを 小川くんから聞きたいんだよね。
O : 売れようとしなくていいんじゃない。
E : というと?
O : 売れようとするから、じゃあ入口を広くして、知らない人達に対して分かり易く接しようって思ってしまうわけでしょう? それって本来の優しさじゃなくて、誤魔化してまやかしで表面上だけやってる形になってしまう。でも本当に良い物であれば自分が手を差し伸べなくても相手はちゃんと付いてきてくれるような気がするし。 海外のクラブシーンは成熟してるし、日本でも此処までくれば成熟してる段階にあると思うのね。それを“消化するもの”にしようとしてっちゃってる。 さっきもEMMAくんとメシ食う前に話したけど、ラーメンだって元々日本の物じゃないし、外国の食文化だったはずが、日本に来て違う物になって、世界中で美味しい美味しいって言われるものになってて。 ちゃんと根本を理解した上で、プラスして独自のものにしていくなら分かるけど、全くもって違う物を作って分かり易くプレゼンしよう、みたいな。 先細りになってくのが見えてるし、終わりが見えてるじゃんって。 終わりが見えてるものを何で皆意欲的にやろうとしてんの?っていう。 そうじゃなく、分かってもらえなくてもいいじゃん、って。
E : 又、食べ物の例。
U : 分かってくれる人はいるだろうってことですよね。
O : それは自分が納得いくか いかないかってところだろうし、 自分が納得してれば理解者は出てくるだろうし、 無理にすぐ結果を出そうとして、売れる為には売れる物を作らなきゃって、 その繰り返しでいろんなことが崩壊してしまってると思うから。
E : 焦らなくていいってことですね。
O : 焦らない方がいいと思う。 曲を作ってる時に一番思うのが、時間、なんだよね。 いつまでに作らなきゃいけないってことになるから。 現実的に仕方ないことなんだけど、リリースのスケジュールとか色々あるから。 だけど〆切があるとそこで諦めざるを得ない部分、ここでもう終わりにしよう、みたいなのがあって。 そうではなくて時間が無限にあるのであれば、一番究極なところまで突き詰めていくだろうし、それは自分が死ぬ間際になってやっと納得できる一曲になるんだろうし。それでは一曲しかできないから、おおげさだし極論かもしれないけど。 だけど、変に先急いで陳腐なものを作って消化されてしまうのであれば、 そうじゃないものを時間をかけてじっくり作っていくって、そういうことを皆がすれば、それを注目してくれるマーケティングは出来ていくだろうし。
E : 精神面でも物質的な部分でも、音楽を作るっていう行為でも、この“消費“から逃れないと俺らは生きていけなくなるんじゃないかって話をよくしてたね。 まさに311以降、みんな生命の危機を感じて。周りに亡くなった人もたくさんいて。答えは明確になってきた、って。 実験的なものって次の世代にとっても、宝なんだよね。 そうじゃない、もっと簡単に出したものは、全くもって意味のない、消費されていくだけのモノだなっていうのが、すごく明確になってきた。 はやのくんからメッセージというか、どういう風に曲を作っていくか? その精神性とかを。
U : 本音言うと、迷わず作ったトラックの方が意外と良くて。
O : そうなんだよ。笑
U : 僕DJやらないから、これは推測なんですけど、 多分DJしてて迷いが出たとして、 あ!ってなると、フロアにその迷いが伝わっちゃうと思うんですよ。小川さんは連戦してるからそれが出ないけど、経験値がない人は出ちゃうと思うんですよ。 作ってても、こっちが良いって作り直して、いや待てよって戻した方が 意外と良かったりとか、そういうパターンって多いと思うんですよ。 海外の人達もいい意味で何も考えずに良い物が作れてると思うんですよね。 僕たちも普段、子供の頃にラジオから流れていたものとか、刷り込まれてる部分があると思うんですけど、海外の人達は小さい頃からテクノとかベースミュージックが流れてて刷り込まれてるから、何も考えずにパーンって出ちゃうっていうか、テキトーに描いた絵がめちゃくちゃカッコイイみたいな、そういうところがあると思うんですよ。 よく小川さんに言われることなんですけど、 日本人って例えばモノがあるとして、ココだけ一生懸命磨いてみたり。そんなのしょうがなくて、荒削りでもいいから全体的に作っていく方がダイナミック感があるっていうか、そう考えてて。いつも。
O : はやのくん、考えだすと長いんで。
E : 一つのところに集中しすぎて、そこから逃れられなくなる、みたいな。
O : 呪縛に。
U : ここに塩3%入れました みたいな癖が出ちゃうと、バッドルーティングになっちゃうんで。
E : 二人とも意見は一致してて、売れるとかそういう余計な情報を入れないで 作る方がいいんじゃないかっていうことだよね?
O : だって自由に作れるんだから自由に作った方がいいでしょ。 結果で、まあ売れましたとか、それは結果論であって。 だって、売れようと思って売れる曲作れる人がいたらソイツ天才だと思うもん。
E : まあでも、売れるコード進行とかリズムとか歌詞とか、ある程度方程式があるじゃん。やるか やらないか なんだよね、本当はね。 やったら品を失うけどお金が入るとか、そういう考えだと思うんだけど、それが日本はバランスが悪くて、どうしても。 海外の場合は曲を作ってる同士が普段から一緒に居ることが多くて、 そこからまたDJや曲作る人が生まれてくるっていう、そういうことの数が圧倒的に違う。 例えば、あのトラックのあのスネアの音ってどっから持ってきたの?みたいな、そういう横の繋がりがあって。そこが欠けてるのね、日本って。横の繋がりで、お互いに良くなっていくっていうのかな、海外のシーンを見てると昔からそうだよね。羨ましいなあって素直に思う。確認していく上で力強くなっていくじゃないですか。何を考えてんのかなあ、じゃなくて、ハッキリ言葉になると全然違う。
O : まさにその情報の話なんだけど、ある人が富家くんに、 『富家さんのあの曲のあのキックってどうやって作ったんですか? 元々は909でこうやってああやってこうやって作ったんですか?』 って質問したのを俺は横で聞いてて、ああそういえばどうやってやってんだろうなあって聞いてたら、富家くんの答えがすげー簡単で、 『え?そんなのさ、出来てる曲のどっかからキック一発抜いちゃえばいいじゃん。』って。
E : これけっこう重要だ。俺も、全く同じ答えを返してるよ。 だけど、音楽制作を始めた人にとって、それは背徳の行為みたいに思えてしまうというか。そう感じてしまうのわかるんだけど。いいんだよ、って。 じゃなきゃサンプリングの文化も失くなっちゃうわけじゃない。サンプリングは文化だから。盗んでくる云々、って言葉にするとアレだけど。人の鞄を盗むのとは根本的に違う。スニークってこと自体がカッコイイ、DJの世界ではね。それを伝えるのが本当に難しい。 どこからどこまでオリジナリティを出すかって、センスだからさ。
U : そこは僕も、昔はそうだったんですけど。使っていいんですか?って訊いたこともありますし。でもそんなところに時間かけてられない。 機材出しのものじゃないとダメとか、そんなことはなくて。 要はサンプラーじゃんって話で、抜けるんだったら使っちゃえって。 そこじゃなくて考えるとこってもっと他にあるし。
O : 抜いたら、それをどう上手く調理していくかっていう。
E : 曲の場合、構成力の方が大事だったりする時もある。 メロとかベースラインっていうのも もちろん重要なんだけど。 DJ的観点から言うと、まあまあの曲をそれなりに聴かせるのってDJの役目でしょ?マドンナの12インチの次に、自分が昨日作った曲をかけれてしまう、それぐらい自由なのがDJの世界だと思うんです。 マドンナのトラックそのまま使って新しい物いれて、自分ではやらないけど、それもひとつの文化。 曲を作る、生み出す行為っていうのをもっと理解できたらいい。 一から909の音を加工して、何時間もかけて、もしかしたら1ヶ月かかるかもしれない、それはそれでいいんだけど、もっと世界の動きは違うんだよね。 音響系とかだと話は別なんだろうけど、これはダンスミュージックであって、決してリスニングじゃないんだ、っていうのがやっぱ思うところなんですね。
O : 音にこだわって、例えば、これは俺が苦労して独自に作り上げたんだって音があったとしても、それをフロアで出した時に音が悪けりゃ誰も理解しないじゃん。
U : フロアで聴いてても、これはあの機材であの音だって言う人っていないと思うんですよ。それこそACIDも303出しじゃなくてもいいわけじゃないですか。あの尖った抽象的なイメージでACIDってなるわけだから。 僕は今回303を持ってたので使いましたけど、でもそれだけで作ってないんで。実はいくつかACIDをソフトで使ってたりしてるんで。
E : 何種類かあって巧い具合にすみ分けてんなあと思って。使い方自体が。AC2Dに関しては、本来のACID HOUSE的なアレがちゃんと成功してると思うのね。今の時代にO&Uが挑戦した甲斐があると思ってて。
O : 今回、一番最初に提出した曲を聞いて、EMMAさんが 『O&Uっぽさを失くしてACID作りました!ぐらいのモノを作れ。』 って言うから作り直したら、 『これACIDすぎるだろ!』 って。どっちなの!? みたいな。笑 『これお前ACIDすぎないか!?』 って。そう作れっていうから作ったのに、これACIDすぎるだろって。笑
U : ACIDっぽさ出した方がいいのかなと思って、ストリングスももっと豪華だったんですよ。フワーっとなってて。リバーブも何もなしでシンプルな軸になってるようなもので。
E : あれ上に重ねられるもんね。 ほんと骨組みだけの形になっててACIDのパルスとかそういうのも全部さ。 ちょっと肉が付いてる感じのイメージなんだよね。 あそこにシンセ入ったり声入ったりっていろんなアイデアってのが、あの曲で 考えられたりして。人の曲だからなんだろうけど。
O : 最初の曲の時に色々やって、それでダメだしが出てるから、 俺、頭の中パーンって飛んでて。
E : ダメだしっていうかさ、ダメだししたわけじゃないんだよ。笑
U : しばらく返事がなくて、あれ良かったんかなあ?みたいな。
O : どうしよどうしよって。
U : 小川さんの声のトーンでだいたい分かるんですよ。 あ、これダメ...なんだなあ、きっと...って。笑
O : で、他の収録曲を二人で聴いて、 はやのくんまずいわこれ、浮くわ。みたいな。どうする?アイデアを。 303メインにして、こういう風にしてったらいいんじゃない?って。 で、はやのくんが『骨組み組むわ』って言って、骨組み組んで。 そしたらもう、これ以上何もいれない方が良いんじゃない?って。
E : ある程度ACID HOUSEになっちゃうといれられないの、何も。
O : 皆の曲聴いたら、ある程度ACID主体って形になってるから、 ワンフレーズとって他のシンセをかぶせるんじゃなくて、骨組み作ろうよってとこだったんだよね。そしたら、これやっぱもう何にもいれられないなって。
E : あれはね、来た時にわかった。ここで止まったんだなと。 で、これで充分だと。
O : あれ以上派手な装飾をしていくと、またソレじゃなくなってしまうし、 逆に邪魔されてメインのものではなくなってしまうじゃん? あ、これ、とりあえず行き止まりまで行ったな、っていう。
E : チャレンジしてもらいたかった。みんなにね。 自分がマラウィでやった時に、すごい難しくて困ってて。毎日毎日ベースの事と上物の事と考えてて。どういう風に重ねたらいいんだ?って。 あとはユニゾンの事も考えたし。ユニゾンってあんまり普段考えないんだよ。 普通にコードいれちゃえばいいやって。 これはもしかしたら、たとえば小川くん達に言ったら面白くなるんじゃないかな、と思って。これからも制作を続けていく上でね。
O : またなんか育てようっていう気が...。
E : 種蒔く じゃないけど、転ぶ石置いてみんな一緒に転ぼうぜ、みたいな。 これだけ苦しいってことは、みんなも苦しいんだろうなと思って。
U : 転んだ後に何かあるかもしれないですしね。
O : すげーポジティブに取ってんな?笑
E : みんな口々に言うのが、機会があるならやってみたかったって、それ本音だと思う。だったら一緒にやろうよってところからアルバムって考えに至ったんだけど。もう少し時間が経てば、メジャーがそういうこと考えてACIDのコンピ作りましょうって、なるかもしれない。 でも今やんなきゃいけないことがあって、それはタイムラグをなくすことだし、先決にね。 他の国に先駆けて出すっていうのがひとつの狙いだったから。 その狙いはね、売れる売れないじゃないところ、やらないとマズイっていう、 それがひとつ解決すると楽しかったので。もしかしたら楽しい方にいくのかなと。
O : 他のアーティストの人達はみんな、議題を投げかけられて、タイミングあればっていうアーティスト心的なものがあると思うけど、うちらは多分違うよね。
E : あ、そう?
O : うわ、また何か投げかけてきた...みたいな。
E : 笑
U : でも打ち返さないとねえ...って。
E : ね、打ち返してもらわないと。
O : しかも至近距離から思いっきり限度なく投げかけてきてるぞ、みたいな。
E : 笑
O : ACIDを基調としてっていうと、いろんなイメージが湧いてきちゃう。 ああも出来るこうも出来るって。でもそれって、一番最初にダメだしされた時に気付いたんだけど、こっち方面とかあっち方面とか、色々装飾系を考えすぎちゃって、どこに絞ったら良いのか、そこが分かんなくなってたの。
E : 曲もいっぱい知ってるしね、難しいところだよね。
O : こういうエッセンスもああいうエッセンスもあるって、とっ散らかってた。 それが装飾やめようよって言った時点で一本にできるというかさ。
U : 普段の流れだとそうですよね。 もちろん曲に喜怒哀楽って在ると思うんですよね。ある程度DJがミックスしていくと当然、将棋の駒じゃないけど、それぞれの役割があるわけじゃないですか。人によっては違うところにも使ったり。 無機質な感じに聴こえても、歌心とか曲心って要るかなって思って。 それがDJとして使う一齣なんだろうけど、買う人ってそれしか聴かないから。あ、これここで使えるなとか。そこで喜怒哀楽って必要だと思うんですよね。そういうところってやっぱ重要かなと思ってて。 ダンスミュージックだからそういうの無いでしょって言う人もいるけど やっぱりすごい重要で、そこでキャッチーなものではなくて根底のところで これイイってところが見えたらいいかなって思うんです。 今回の曲もACIDのフレーズをハモリで作ったりしたんです、一回。 でも、みんな追えないですよそんな。ここで上がってきて、ここでかぶって、なんてそんな聴き方はしないし。 どっちがメインなのか、出てくるまでに色んなお膳立てがあると思うんですけど、甘いもの食べながらステーキは食べないじゃないですか。 だったらどこのシーンなんだろう?みたいなことを考えて作りますね。やっぱ。他の曲でもそうなんですけど。
E : さすが。食べ物の話ね。だいたいわかりました。 そうね、自分で満足してても理解されなかったらあんまり意味がないし、 せっかく良い物でも伝わらないのは勿体ないじゃない。 もちろん、メチャメチャでもいい時はあるんだけどね。
O : でもそれって特例なんだよね。 ちゃんとしたものが作れた上でのあえて、とかさ。そういうのだったカッコイイと思うけど。
E : ハウスもテクノもひとつのフォーマットであって。その中で、縛りが無いように見えて実は縛りがある。 はみだしてはいけないルールが在って、その中での自由なんだよ。 そういう意味で、曲を作り始めた時にOMBとか俺とかに聴かせた結果をはやのくんに言ったと思うんだけど。
O : ガンガン言ってくれる人がいるから、ラッキーなんだよね。 最初なんかは言われる度に毎日毎日胃が痛くてしょうがなかった。
E : どう伝えていいか難しいしね。
O : 俺の場合だと、かける側でもあるし、はやのくんと一緒に作る側でもあるから、不思議な気持ちなのよ。 冷静に客観的に、自分達で作った曲って聴くと、DJだったらかけないな、とか3軍だなとかさ、分析できてしまうわけじゃん。そこはすごい葛藤があったし。 スギウラムに相談したこともあったもん。 DEPARTUREからROUTINE出して、カオルさんのリミックスやらせてもらって、SMASH出して、MEDITATION出して。 ひとつひとつリリースを積み重ねるごとにレベルアップしてるのは分かるんだけど、でもまだ、自分の曲を自分の曲ですって自信持ってかけることが できなかったの、最初。 リリースパーティーって形で呼ばれて行っても、かけるのをすごく躊躇しちゃうの。で、スギウラムに、どうだった?って聞いたら、俺はかけちゃうね! みたいなこと言うから。笑 そうゆうもんかあ?って。
E : 周りにいろんなタイプがいるからいいと思うよ。横の結び付きで。 和気あいあいじゃなくて、刺激し合いながら、自分達の国のムーブメントにできたら良いし。日本の底力というか。 俺たちずっと苦しめられてきた部分ってあるじゃない、他の国よりも。 たとえば風営法の問題とか。あれでもう本当に何十年も遅れてしまってるわけだから。 なんで俺たち苦しんできたんだ?っていうのの、その先、 俺たち苦しんだ甲斐あったよね、っていうものにしたいんだよね、できたらね。 その為に一緒にやっていきましょう、って。
O : 個人で作ってると、教えて欲しくても教われない環境にあるのが普通でしょ。 すぐ意見を言ってもらえる状況にあったっていうのはすごくラッキーだし、 尚かつ曲を出してもらえるのも本当ラッキーだし。 じゃあ曲出しましょうってなった時に、原曲も聴いてない段階でスギウラムが 『俺リミックスやるよ!』って言ってくれて、現実的にお願いできないとしても、そういう気持ちでいてくれる人がいるのも、すごく恵まれてるし。
E : 今だんだんそういうのがライバル関係云々ではない形になってきて、すごい良い状況だと思うの。 “DJが曲を作る”っていうのは俺の世代ぐらいから始まってるでしょ? 富家くんは同い年だし、コウくんとか、この辺から始まってて。 あの頃は同世代に対してどこかカッコつけて、聞かないとか、訊きたくても訊けなかったり、あとはほら、みんなディープハウスの同世代なのね、曲作り始めたのって。時間の経過で皆が大人になってきて、そういうのも隠さず話せるようになったから、次の世代にすごく素直に伝えられるようになってきた、ってことかな。 OMBなんかもそうだけど、一曲目の時にOMBから電話かかってきて 小川さんの曲聴きました?どう思います?あれはどうしたらいいと思う? って、けっこう二人でずっと話してたの。 俺的にはアイデアがあって、かっこいい曲ではあるけど、あの曲の良さが伝わるように、どうやってそう作れるようにするのか?って。 それは俺らの力じゃできないよねって。 俺らの思う良い部分を良いとは言えるけど、そこだけ受け取られてしまうと、直さなきゃいけない部分を直さないまま進んでしまうっていう危惧があって。
O : 時間が経てば経つほど、一番最初に気付いてなきゃいけないことを 分かってなかったってことになってしまうからね。
E : どうしても一番最初が良かったって愛情が出てきちゃって、トラックにね。 固執しちゃってたわけ。 でもそれを捨てるしかないんだよねっていう。 申し訳ないけどそれを捨てないと次にステップでいけないから。 あの曲をもう一回構築するんじゃなくて、同じタイトルとかでもう一回新たにやった方が、っていうアイデアしか出なかったの。
O : あれ二年ぐらいかかってるもんね。
U : カップリング曲、何か一曲いれようぜってなってROUTINE作った時、 めちゃくちゃ早かった。 スギさんには申し訳ないけど、リミックス喰おうぜって言ってたんですよね。踏み台にしようぜ、いい汁吸っちゃおうぜ、みたいな感じで考えてたんで。
O : え、そんなこと考えてたの?
U : え!だって小川さんも そう言ってたから。じゃ、イこうや!みたいな。
E : なんかちょっと、見る目変わるわー。
O : O&Uのダークゾーンだから。
U : おいしいところ巧く盗めるようになりたいじゃないですか。いいエッセンスならそこ使ってコアにしたらどう?みたいな感じですよね。
EMMA×OGAWA&UNIC
The end